オフィスラブはじまってました
「お、なにやってんだ?」
とバーベキューコンロを見て言い、

「こいつは誰だ」
と流れるようにひなとを見て訊いてくるのは、ガッチリとした体躯に、濃い整った顔。

 剃髪はしていない黒衣の坊主、緒方だった。

 入野が笑って答える。

「柚月さんがお肉を焼くというので、ご一緒させてもらってるんですよ。
 この人は、秋本ひなとさん、この庭の住人です」

 いや、それだと、ひなとは庭に住んでいることになるんだが……と思う柚月の前で、入野は緒方の法衣を見ながら、

「お仕事だったんですか?」
と訊いていた。

 いやいや、と柵に手をかけ、怠惰に寄りかかりながら緒方は訂正する。

「入野。
 これは、仕事じゃなくて趣味だから」
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