オフィスラブはじまってました



「アパート燃えたんだって?」

 昼休みも終わり頃。

 秋本ひなとはトイレで、化粧を直していた同期の村雨真希子(むらさめ まきこ)にそう訊かれた。

「そうなんだよー。びっくりした。
 ちょっとだけ荷物は持ち出せたんだけどさ。

 もうあのアパートには住めないから、何処か借りなきゃなーと思って」

「で、今、何処に泊まってるの?」

「備品倉庫」

「備品倉庫?」
と真希子は化粧を途中で止め、訊き返してくる。

「いや昨日、焼き出されて、どうしようかなーと思って。
 ホテルに泊まろうかなと思ったんだけど。

 なんかの大会だかイベントだかがあるとかで、近くのホテルいっぱいでさ。

 困ってなんとなく会社まで来ちゃったんだよ、近いし。

 そしたら、警備員さんがどうしたの? って訊いてきてくれて。

 警備員室に泊まっていいって言ってくれたんだけど。
 申し訳ないから、備品倉庫で寝てもいいですかって」
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