オフィスラブはじまってました
 ひなとは、

 所詮、私はハムスター。

 人間様の嫁にはなれないだろうな、と思っていた。

 お互いがそんなことを考えながら、古い城下町の祖母の家に寄り、ちょっとゆっくりしてから柚月の実家に挨拶に行った。

「どう? 柚月っ。
 上手くやれた?

 お返しの品が来るってことは上手く話がまとまったってこと?

 それとも、柚月ごと叩き返されたってことっ?」
と意気込んだ比呂子に問われ、

「さ、さあ……?」
と二人で曖昧な返事をしてアパートへの道を歩く。

 もう夕方だった。

「なんかいい匂いがしますね」
と通りすがりの猫をかまいながら、ひなとは言う。

 澄子の畑辺りまで来たとき、
「おーい」
と聞き覚えのある声が呼びかけてきた。
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