オフィスラブはじまってました
「それが将来の夢か?
 職人になるのか?」
と緒方に突っ込まれ、

「いえ、一回やってみたいだけです」
とひなとは微笑み言った。

「よくチーズ職人の人が大きな丸いチーズを磨いてるじゃないですか。

 ほら、よくアメリカのネズミが持ってる、ショートケーキみたいにカットした穴だらけのチーズ。

 あれがホールになってるチーズを職人さんが磨いてるのを見て、やってみたいなあって」

「……アメリカのネズミ、よく持ってるか?」

「アニメとかでよくネズミの側に描いてあるかもしれないですね……」
と緒方と柚月が呟き、田中は黙々と野菜を焼いていた。

「でも、それは一回やってみたいだけで。
 将来は、春日さんに叱られない人になりたいです」
とひなとは笑う。

「……春日さんって誰だ?」
と緒方が呟き、柚月が、

「秘書の、まあ、いわゆるお局様という奴ですかね」
と緒方に教える。

「小さいな、お前の将来の夢」
と緒方は、ひなとに言ったが、柚月は、

「いや、ある意味大きいですよ。
 あの人に叱られない人、見たことないんで。

 うちの本部長も叱られてましたよ」
と言っていた。

「それは、ある意味、すごいな。
 公平で」
と緒方が言ったとき、入野が澄子を振り向き、訊いた。

「澄子さんの将来の夢はなんだったんですか?」
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