オフィスラブはじまってました
「家賃が振り込まれてたら、幽霊じゃないですよね?」

「中で死んでるのに、口座から落ち続けてるだけかもしれんだろ」

 そこで、おじさんは自分で話を振っておいて、
「ま、僕らがたまたま見ないだけなんだろうけどね。
 ないない、この平和な住宅街でそんなこと」
と笑う。

「じゃあ、またね。
 いつもありがとう。

 いい酒もらったから、今度持ってくよ」
と去っていくおじさんに、ありがとうございます、と頭を下げたあと、なんとなく、二人で201号室を見上げた。

 じっと見ていると、カーテンの陰から向こうもこっちを覗いていそうな気がしてくる。
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