オフィスラブはじまってました
 えっ?

 結構みんな暗がり散歩してしますよっ、とひなとは何度もアパートの前の道を振り返りながら慌てる。

 だが、柚月は構わず、ひなとを抱き、夜の庭を部屋に向かって歩く。

 寝袋に入ったままのひなとを見て言った。

「最初お前が寝袋で寝てると聞いたとき、こいつ、どうなんだとか思ってたんだが」

 思ってたんですか……。

「ミノムシの寝袋から出て来たのは、蛾でも蝶でも人魚姫でもなかったな」

「え……」

「……俺の花嫁だ」
と言って、口づけてくる。

「ま、また、ハムスターとか言われるのかと思ってました」
とひなとは照れて俯き言ったのだが、

「いや、そこは否定してない」
と柚月は言う。
< 548 / 576 >

この作品をシェア

pagetop