オフィスラブはじまってました
「そういえば、あのとき、これ夢かなと思ったんですよね。
 緒方さんも犬もあまりにも静かで」

「俺だって静かなときもあるだろうよ……」
と言ったあとで、緒方は、

「どうだ。
 結婚式の準備は進んでるか?」
と訊いてきた。

「ああ、はい。
 式を七月に決めてしまったので、土日なんか、もう目も回るくらい忙しくて。

 日々、夢も見ないで寝てるんで……

 あっ」

 夢も見ないで寝てるんですよ、と言いかけたのだが、その瞬間、ひなとは思い出していた。

「そうだっ。
 今朝方、久しぶりに夢を見ましたよ」

「ほう。
 明け方の夢は現実になるというが、どんな夢だ?」
と緒方は訊きかけたが、なにかの気配を感じたように、後ろを向いて笑う。

「猛烈な勢いで追いついてきてる奴がいるぞ。
 ……嫉妬深いな」
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