君にずっと恋してる〜叶わない恋だとしても〜
病院につくと、しんぞ心臓が嫌な音を立て始めて、落ち着かなくなっていた。

現実は…病院の中にある。

ゴクリと私は生唾をのんだ。

「りんちゃん、ここで少しまっててくれる?」

「あっ…はい」

待合室に連れてきてもらった。

私は、ソワソワして落ち着かず、

ウロウロしたり、窓の外を眺めてみたり、
制服をいじったりしながら、
剛くんを待った。

「リンちゃん、待たせてごめん」

その声に私の動きは一瞬止まり、剛くんの方を見た。

「今日は、母親が尋斗を見ていて」

…尋斗さんのお母さん…か。

尋斗くんを近く感じる嬉しさと
近くに感じる度、現実が押し寄せてくる。

「リンちゃん…。こっち」

剛くんが手招きした。

私は、会いたいと願っていたわりには、
足に重しをつけたかのような足取りで
剛くんのそばに行った。

剛くんは、私の姿を捉えたまま微笑んで私を見ていてくれた。

私も剛くんに微笑みかえした。


少し身体が震える。



私をじっと見ていた剛くんは


私の背中に軽く手を回して、そっと背中を押しながら隣りに並んで
尋斗くんのいる病室まで誘導してくれた。


病室に着くまで、お互い沈黙のままで歩き続け、
二人の足音だけが通路に響いていた。


「…ここだよ。」


私の背中にあった剛くんの手が離れたと同時に
病室の扉の前に立ち止まった。


表札に、《今井尋斗》様 とかかれていた。


この先に…尋斗くんが居るの?


扉に目をやった。

ここまできても、まだ、半分信じきれていない。

今目の前には、双子のお兄さんがいて
尋斗くんと居るみたいで。

だけど…

私はまた。表札に目をやった。

剛くんが、ゆっくり、病室のドアを開ける。

少しずつ、剛くんが開けて行く
その先には、病室の中の光景が
私の目に入ってくる…。

お母さんらしき人が椅子に座ってるのが見えた。

ベッド…。

布団がかぶされているけれど、
足であろう膨らみがあるから、誰かがやはり寝ている。

…尋斗…くん?


ゴクリと、また、生唾を呑んだ。
心臓の鼓動が速くなって、



手が…身体が…さらに震える。




扉を開けて、剛くんは、しばらく私の横で
何も言わず立っていた。



私は、身体が硬直して、動けなくなっていた。



「…りんちゃん。大丈夫?」



背の高い剛くんは、腰をかなりまげて
私の顔の位置まで、顔を下ろして
私を覗き込んだ。

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