極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】

10.あなたと、もっと一緒にいたいです

 仕事ができそうで、女性にもモテそうで、まるで映画の主人公みたいなイケオジにとても似合っているフレグランス。

 それに胸元の薔薇の香りも混ざって、ちひろの脳を官能的に刺激する。

「危ないな。立てるか?」

 身体を両手でしっかりと支えてくれる力強さに、ちひろはクラクラとしてしまう。

「は、はい……だいじょ……う……ぶ、あれ?」

 そう口にしようとしたが、酔っ払って呂律がうまく回らない。
 足がガクガクと震えてしまい、彼にすがりつかないと立っていられない。
 彼に抱きついたまま、ヨタヨタとバーを出て行く。

「あの……お酒代……えっと……」

 ちひろは、ショルダーバッグから財布を取り出そうとした。
 しかしイケオジがスマートな仕草で押し返してくる。

「あとでいいから」

「え……でも……」

 あととは、どのタイミングだろう。
 首を傾げてモヤモヤしていると、彼に抱きしめられたまま、エレベーターの前までくると――
 目の前が真っ青になってしまった。
 気持ち悪くなって前屈みになると、イケオジが背中をさすってくれた。

「どこかで休んだほうがよさそうだな」

 彼は親切でそう言ってくれたにすぎない。
 しかしちひろには、酔っ払った女性を、そういう場所に連れ込むときの常套句のように思えた。

(でも、このひとなら……私……)

 ちひろは、心配げな顔を向けるイケオジに視線を移した。
 彼の温情深い眼差しと交錯する。

 酔っている今なら。

 仕事と収入を失った今なら。

 こんなに優しいイケオジと出会えた今なら。

 そして彼が失恋したという今なら。

 言えるかもしれない。

「私……」


 ――あなたと、もっと一緒にいたいです……


 ちひろは小さい声で、そう呟く。
 イケオジの目が大きく見開かれたが、ちひろはそのまま彼の胸に顔をうずめた。


 §§§



 鼻腔をくすぐる、甘くセクシーな香りで目が覚めた。

「ん……」

(とってもいい気分、もっと寝ていたい……)

 首の下に硬めの枕があり、背中には温かい何かがあった。
 まるで守るようにちひろの身体を包みこんでいる。
 心地よくて、なかなか瞼を開けることができない。

(ダメ……遅刻しちゃう。起きなきゃ……でも、なんだか頭が痛い……)
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