極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】

50.突然の海外出張!? ドラマみたいな世界です

 どうしよう。
 なんと言って取り繕えばいいのか。

「早いな」

「は、はい。ちょっと……確認したいことがあったので」

 しどろもどろな言い訳を突っ込まれたらどうしようと心配したが、逢坂はどうでもいいという顔をした。

「そういや、大事なことを伝えていなかったな。パスポートは持っているか?」

 突然関係のない話を振られて、ちひろは頭からハテナマークが飛び出す。

「パスポート? はい。持っています」

 パスポートなら、短大卒業旅行でグアムに行ったときに取得した。
 しばらく使わないだろうと、スーツケースの中に眠っているはずだ。

「突然海外出張になることもあるから、携帯しておいてくれ」

「えっ! 海外出張!?」

 突然の海外出張。
 そんなドラマみたいなことが現実にあるのか。

 いや、これまでもドラマみたいな光景を何度も見ている。
 きっとあるのだ。

 この会社では、突然の海外出張が!
 動揺したからか、逢坂がちひろの肩をポンポンと叩いた。

「これからは、君にいろいろと行動してもらうことになる。今から心構えしておいてくれよ」

「いろいろとって……具体的にどこですか?」

「有名なところでフランスのランジェリーショーだ」

 日本語でも通じるグアムとフランスとでは、まったく勝手が違う。
 ひとりで動き回れる自信がない。

 泣きそうな顔で俯くと、彼が安心させようとしたのか優しい声を出す。

「なんて顔をしているんだ。最初はおれが同行する」

「逢坂社長が?」

 不思議なことに、逢坂と一緒に海外出張と聞いて、不安どころか逆に安堵の気持ちになってしまう。
 彼ならばトラブルが起こっても対処してくれるだろうし、何より海外の旅に慣れていそうな気がした。

「あり……

「おはようございます。逢坂社長」

「おはようございまーす」

 ありがたいですと返そうとしたら、高木を筆頭に次々と社員が入室してきた。

「ああ。おはよう」

 ちひろと逢坂が向かい合って会話している光景を目にした高木たちが、一瞬で顔をしかめた。
 また苦言を呈されるのかと思い、無意識に身構える。

 だが彼女たちは何も言わず、それぞれのデスクに向かった。

(よかった……海外出張の話のあとで。もし逢坂社長と同行するくだりを聞かれていたら、何を言われるかわからないもの)

 おそらく厚かましいとか、能力不足とか言われるに違いない。
 ……自分でもそう思うのだから、反論のひとつもできないのが悔しいところだ。

 安心したのも束の間。
 逢坂のほうから、彼女たちの怒りの導火線に着火してくれたのである。

「国内出張もあるから、それなりに用意しておけよ。遅刻したら容赦なく置いていくぞ」

「……は、はい」

 鋭い視線が、背中にいくつも突き刺さったような気がする。
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