極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】

57.社長のことが好きなんですね

 先輩後輩という関係とはいえ何か釈然としないものを感じ、胸の内がモヤモヤとしてしまう。
 会議が終了すると、デスクに戻ってきた高木が、珍しくちひろに声をかけてきた。

「ハローワークの長谷川さん、こられていたんでしょう? 逢坂社長とどんな話をしていたの?」

「特に、これといった話はしていなかったと思います」

 高木に好印象を持っていないちひろは、素っ気なくそう返す。
 彼女はふんと鼻を鳴らし、普段は雑談の欠片もしてこないちひろに、再び話しかけてきた。

「長谷川さんと逢坂社長、なんだか特別な関係って感じよねえ。そもそも大学時代の友人って二十年以上も昔のことでしょう? それが今まで続くなんてね、何かあると思わない?」

「特別といっても、長谷川さんは結婚指輪をされていました」

 高木は目を細め、赤い唇の口角をにやりと上げた。

「三ヶ月くらい前に結婚したそうよ。晩婚よねえ。逢坂社長と長谷川さん、仲が良すぎて結婚するのかもと思っていたんだけど。でも、これで逢坂社長は完璧フリーよね。うふふふ……」

 高木の口調に、何やらいやらしいものを感じたちひろは、彼女から視線を外したまま冷たく言い返した。

「……晩婚とか逢坂社長がフリーだから喜ぶとか、セクハラ発言よりも品がないです」

 高木の顔を見ていないが、息をのむ音が聞こえた。
 きっと般若のごとく怒っているに違いない。
 だがちひろは、尊敬する逢坂を下世話なネタにしてほしくなかった。

(……ん? 高木さんも逢坂社長を神聖視していたような気がしたけど、なんでそんなこと……あっ!)

 何かに気づいたちひろは、つい声を大きくしてしまう。

「高木さんって、もしかして逢坂社長のことが好きなんですか? だから長谷川さんのことを悪く言ったり、私にアレコレ文句言ったりしてきたんですか?」

 ちひろの発言に、高木が椅子から転げんばかりに飛び跳ねた。
 眉と目をつり上げ、ちひろに怒りを示してくる。

「な、何を……! あんた、何言い出すのよ!」

「すみません……! 考えすぎでした。忘れてください」

「ばっ、ばかじゃないの!」

 高木はハイブランドチームの社員を呼び出し、頭から湯気を出した状態で、カツカツとヒールを鳴らして給湯室に行ってしまった。
 お仲間と、ちひろの悪口でも言うのかもしれない。

 少し前までは、陰で何か言われるのが怖かったが、今は何も思わなくなった。
 自分なりにしっかりと業務を行っていたら、外野の声がまったく気にならなくなったのである。

 ひとはひと。自分は自分だ。
 そう心に誓い、手元の資料に目を通す。

「新商品の企画、およびそれの販促活動……か。逢坂社長に、いいところを見せたいな……」

 それには、この企画を成功させるのが一番のような気がする。

「どこまでできるかわからないけど、頑張ろう」


 ちひろはその日から、できる限りのことを精一杯取り組んでみることにした。


 §§§

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