極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】
「当然だ。新商品の発売日はいつでも自問自答している。求められる商品か、販促は十分か、マーケティングは間違っていないか。そればかりを考えてしまうな」

 深くしみじみとした口調でそう言うものだから、ちひろの胸がキュンとしてしまう。

(そうなんだ……逢坂社長も私と同じ、ドキドキしちゃうんだ……)

「それが部下の担当した商品でも一緒だ。売れてほしいし、話題になってもらいたい。そう願っている」

 商品が売れることを願っていると聞き、ちひろの胸が昂ぶってしまう。

(この間の……額にキスされたことを訊きたい。どう訊けば……)

 熱弁を奮いすぎたと悟ったのか、彼が髪掻き上げながら給湯室へ行こうとした。

「ま、待ってください!」

 逢坂が足を止めて、肩越しに顔だけ振り返った。

「逢坂社長。あ、あの……」

「どうした?」

(あれはキスですよね? そう訊いて、何かと拍子で当たっただけとか答えられたらどうしよう。自意識過剰とか、セクハラとか騒ぐなとか怒られるかもしれない。でも……)

 額に逢坂の唇が当たったことに、嫌悪感などなかった。


 それどころか――


(もっと……別のところにキスしてほしいなんて……ヤダ……私ったら……なんてことを考えているのよ!)

 妙な感じで呼び止めたせいか、逢坂が訝しげに首を傾げている。
 このままだとちひろが、ちょっと変な女になってしまう。

「何か言いたいことがあるなら……」

「商品が売れたら、ご褒美としてキスしてください!」

 勢いあまって彼の言葉を遮り、そう叫んでしまった。
 もう視界がグルグルと回ってしまう。

(わ~た~し~何言っているのよ~! は、は、恥ずかしい~!)

 呆気にとられたのか、逢坂は何も返してこない。
 当のちひろは、地面に穴を掘って逃げ込みたくなる衝動に駆られていた。

(冗談です~って返すのは今更? どうしよう……取り繕いかたがわからない~!)

 顔を真っ赤にさせてワタワタしていると、逢坂がふっと笑った。
 ちひろの頭に大きな手を乗せ、優しくポンポンと叩く。

「そうだな。全部売れたら考えよう」

 間近に逢坂の端整な顔がきて、ちひろは顔から火が噴き出しそうになる。

(冗談に取られたの? それとも本当に全部売れたら……? どっち?)

 期待に満ちた目をするちひろを、彼は面白そうな顔で見返してくる。
 それだけで、もう心臓がバクバクしてしまう。
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