極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】

70.販売施策…やったことありません

「営業先で商品提案をしたあと、飲み会に誘われてね」

「社長自ら営業ですか?」

「昔なじみの取引先は、おれが直接行っている」

(……大変だな。でもさすが逢坂社長。酔っ払っているわけでもないし酒臭くもない。きっとお酒を飲む姿も、ちょい悪オヤジって感じで渋いんだろうな)

 ちひろは、逢坂がクールに酒をたしなむシーンを、脳内で思い描いた。
 なぜかはわからないが、赤い薔薇のおじさまが、渋くシェリートニックを飲む姿と重なってしまう。

(うーん……やっぱり、赤い薔薇のおじさまと逢坂社長って似ているよね。どっちもイケオジだし……)

 ……なんてことを言っている場合ではない。
 肝心のコスト削減について、早速彼に伺うことにした。

「さっきの話ですけど、コスト削減の方法を教えていただくことはできますか?」

「もちろんだ」

 逢坂は気だるげに髪を撫で上げ、背もたれにもたれかかった。
 ふわりと、アルコールに混じってフレグランスの香りがした。

(ダメ。やっぱり赤い薔薇のおじさまを想像しちゃう……だって、同じ香りだもんっ……)

「コスト削減にはいろんなパターンがある。……妙な顔をしているが、ちゃんと聞いておけよ」

「は、はい!」

 慌てて煩悩を振り落とし、逢坂の説明に耳を傾ける。

「まずは原価を下げる。例えば……生地の質を下げるとか、製造工場を変えるとか」

「……私、そこまで手配できる自信がありません」

 生地の質を下げるなら、またマテリアルサンプルを山ほど取り寄せないといけない。
 工場も変えるとなれば新しい工場を探さねばならない。
 そのどちらも今のちひろには敷居が高かった。

「あとは、生産数を増やすというところか」

「増やす? 前回生産した7,000枚以上ということですか?」

「そうだ。ロットが増えればそのぶん安くなる。できれば5万……いや8万枚がいい。ここまで生産すれば、安くしてくれと交渉できる」

「8万枚……」

 10倍以上の枚数を提示され、ちひろは息を呑む。

「7,000枚売るのに2週間かかりました。8万枚を売り切るのに半年以上かかると思いますが……いいんですか?」

 倉庫には3ヶ月以上在庫を置かないと、ECコマースの橘から聞いたような気がする。
 すると逢坂は即答でこう言い切った。

「いいわけないだろう。2ヶ月で売り切れ」

「ええ……!?」

 売り切るのに、半年以上……いや下手をすると1年近くかかるかもしれないのに、2ヶ月?

「無理です! 私、奇跡なんて起こせませんから!」

「わかっている。誰も君に奇跡など求めていない。求めているのは販売施策だ」

「は、販売施策……?」

 それだって思いっきり自信がない。
 販売施策なんて、これまでの人生でやったことなどないのだから。

 困り果てて固まってしまったちひろに、逢坂が鋭く名を呼ぶ。

「ちひろ」

「は、はい」
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