極上イケオジCEOのいちゃあま溺愛教育 ~クールで一途な彼の甘い独占欲~【完結】
7.お酒と愚痴とイケオジと
「ジントニックっていうお酒は聞いたことがあるけど、シェリートニックは初耳なんです。だから、どんな味なのかな? と思って、つい……」
イケオジがグラスとカラカラと揺らし、口角を少し上げた。
「シェリー酒をトニックウォーターで割ったものだよ。シェリー酒を飲んだことは?」
「いいえ。普段はお酒を一切飲まないんです。今日は特別。嫌なことがあって……」
「嫌なこと? よければ話してみないか。胸がすっきりするかもよ」
「ええと……いいんですか?」
イケオジは優しく笑うと頷いた。
彼はなんとも聞き上戸で、ちひろは初対面だというのに、会社であった事件を打ち明けてしまう。
「今朝、会社に行ったら計画倒産していて、社長が夜逃げしたっていうんです。お給料もボーナスもないかもしれなくて……」
「土曜日なのに休日出勤だったのかな? それとも、もとから出勤日?」
「週休二日制だったはずなのに、いつの間にか土曜日出勤が当たり前になっていて、それで……」
酔っているせいか、話の筋道も脈絡もないかもしれない。
それでも彼は真剣に聞いてくれた。
ひととおり話し終えると、イケオジが腕を組み、うーんと首を傾げる。
「月四十五時間を超えた時間外労働は罰則が科せられると決まっている。証拠を揃えて申請すれば、改善されたかもしれないよ」
「土曜日はタイムカードを打っちゃいけないっていう風習でした。だから証拠なんてないんです」
ちひろはふうと息を吐くと、肘をテーブルについて手の甲に顎を乗せた。
力のない声色で、口にしても仕方のない愚痴を零す。
「私は土曜日出勤があってもよかったんです。……仕事が大好きだし。でも……お給料とボーナスの振り込みを伸ばされ、その間に計画倒産されて、挙句の果ては信じた社長に逃げられてしまった自分がバカみたいで……」
「まったくバカじゃないよ。悪いのは、その社長。会社が傾いたからって、君みたいに真面目に働く社員を守らず、自分だけ逃げ出すなんて言語道断。社長の器じゃない」
イケオジが確固とした口調でそう言ってくれるから、ちひろの心も少しだけ晴れていく。
「そうだ、こう考えないか? 倒産は、君がもっとふさわしい会社に転職するためのきっかけだったと」
「ええ……? もっとふさわしい会社に転職するため……?」
「そう。君の真面目さや根気強さは、貴重な能力だ。それを認めてくれる社長のもとで働くべきだよ。これを機にそんな会社のことはすっぱり忘れて、次の就職先のことを考えよう」
誰かに認めてほしかった。
たいした戦力ではないが、毎日コツコツと働いていることを褒めてほしかった。
彼はちひろを褒めてくれるだけでなく、落ち込んでいた気持ちも浮上させてくれる。
イケオジが自分の欲しかった言葉を次々と並べてくれるので、ちひろは無意識に顔が緩んでしまう。
「ありがとうございます……」
「それで、ヤケ酒だったのかな?」
そう訊かれ、ちひろは照れた顔で肩をすくめる。
「そうなんです。でも思いつきで入ったバーだし、気後れしちゃってカクテルの味も楽しめてないけど、あなたみたいに格好いいおじさまに愚痴を聞いてもらって、少し気がラクになりました。ありがとうございます」
ちひろのあけっぴろげな礼に対し、イケオジは困った笑いを浮かべる。
イケオジがグラスとカラカラと揺らし、口角を少し上げた。
「シェリー酒をトニックウォーターで割ったものだよ。シェリー酒を飲んだことは?」
「いいえ。普段はお酒を一切飲まないんです。今日は特別。嫌なことがあって……」
「嫌なこと? よければ話してみないか。胸がすっきりするかもよ」
「ええと……いいんですか?」
イケオジは優しく笑うと頷いた。
彼はなんとも聞き上戸で、ちひろは初対面だというのに、会社であった事件を打ち明けてしまう。
「今朝、会社に行ったら計画倒産していて、社長が夜逃げしたっていうんです。お給料もボーナスもないかもしれなくて……」
「土曜日なのに休日出勤だったのかな? それとも、もとから出勤日?」
「週休二日制だったはずなのに、いつの間にか土曜日出勤が当たり前になっていて、それで……」
酔っているせいか、話の筋道も脈絡もないかもしれない。
それでも彼は真剣に聞いてくれた。
ひととおり話し終えると、イケオジが腕を組み、うーんと首を傾げる。
「月四十五時間を超えた時間外労働は罰則が科せられると決まっている。証拠を揃えて申請すれば、改善されたかもしれないよ」
「土曜日はタイムカードを打っちゃいけないっていう風習でした。だから証拠なんてないんです」
ちひろはふうと息を吐くと、肘をテーブルについて手の甲に顎を乗せた。
力のない声色で、口にしても仕方のない愚痴を零す。
「私は土曜日出勤があってもよかったんです。……仕事が大好きだし。でも……お給料とボーナスの振り込みを伸ばされ、その間に計画倒産されて、挙句の果ては信じた社長に逃げられてしまった自分がバカみたいで……」
「まったくバカじゃないよ。悪いのは、その社長。会社が傾いたからって、君みたいに真面目に働く社員を守らず、自分だけ逃げ出すなんて言語道断。社長の器じゃない」
イケオジが確固とした口調でそう言ってくれるから、ちひろの心も少しだけ晴れていく。
「そうだ、こう考えないか? 倒産は、君がもっとふさわしい会社に転職するためのきっかけだったと」
「ええ……? もっとふさわしい会社に転職するため……?」
「そう。君の真面目さや根気強さは、貴重な能力だ。それを認めてくれる社長のもとで働くべきだよ。これを機にそんな会社のことはすっぱり忘れて、次の就職先のことを考えよう」
誰かに認めてほしかった。
たいした戦力ではないが、毎日コツコツと働いていることを褒めてほしかった。
彼はちひろを褒めてくれるだけでなく、落ち込んでいた気持ちも浮上させてくれる。
イケオジが自分の欲しかった言葉を次々と並べてくれるので、ちひろは無意識に顔が緩んでしまう。
「ありがとうございます……」
「それで、ヤケ酒だったのかな?」
そう訊かれ、ちひろは照れた顔で肩をすくめる。
「そうなんです。でも思いつきで入ったバーだし、気後れしちゃってカクテルの味も楽しめてないけど、あなたみたいに格好いいおじさまに愚痴を聞いてもらって、少し気がラクになりました。ありがとうございます」
ちひろのあけっぴろげな礼に対し、イケオジは困った笑いを浮かべる。