幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~
――〈駒田印刷〉は社長ご夫妻と十人くらいの社員さん達が切り盛りしている,いわゆる町の印刷屋さんだ。
「藤木さーん,お客さんにお茶お出しして」
「はい」
「それ終わったら,事務所のコピー機の用紙補充しておいてね」
「分かりました」
「あと,伝票の整理もね」
「……はい」
事務のパートで入ったはずのあたしの仕事は,雑用がほとんどだった。とはいえ,伝票を整理したり,経費の計算をしたりという事務作業もあるので,商社勤めの経験は多少は役に立つ。
あたしはそういう仕事を週四でこなし,夕方早めに帰宅して,夕食の支度や家事の合間にせっせと小説の投稿をしていた。
でも,ほとんどルーティンワークのような毎日には刺激がなく,正樹さんは相変わらずあたしに無関心。そのくせ,「あれはダメ」,「それは認めない」とやることなすこといちいち口うるさい。
そんな毎日に,あたしは早くもウンザリしていた。