幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~
「借金肩代わりの件は,白紙に戻るだろうな」

「えーーーーっ!? そんなあ……」

 ……つまり,回避は不可能ということだった。家を救いたければ,あたしはその御曹司(おんぞうし)と結婚するしかない。あたしには決定権はない,と。

「お願いよ,里桜! お父さんと,〈田澤(たざわ)フード〉を救うためだと思って,このお話受けてくれない? お相手は立派な家柄の方だし,いいご縁だと思うわよ」

「でもあたし,会社辞めたくないし……。っていうか,あたしの仕事のこと,先方さんは何て?」

 あたしは大学を卒業してから,父の会社ではなく小さな商社に勤めていた。当時で勤続三年目,ちょうど仕事が面白く感じてきた頃だった。

「『結婚するなら,会社は辞めて家庭に入ってほしい』とおっしゃってた。ただ,正社員はムリでも,家事をしながらパートで働く分には構わないとな」
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