幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~

1・再会

 ――こうして,あたしにとって地獄(じごく)のような結婚生活が始まった。
 
結婚式には,新郎(しんろう)側が大企業の一族ということもあり,仰々(ぎょうぎょう)しいほど盛大な披露宴(ひろうえん)が行われた。でも,あたしは全然楽しくなかったし,その時の豪華なお料理の味も思い出せない。
 
 そこはあくまで「藤木一族の嫁を世間に公表する場」であり,新婦(しんぷ)であるあたし自身がこの結婚を喜んでいようがいまいが,あたしが死刑台に向かうような気持ちでいようが,出席者には一切関係なかったらしい。

 そして,彼――新郎である正樹さん――の態度にも,あたしは絶望した。彼は式の間も披露宴の席でもずっとあたしには素っ気なく,それは初夜(しょや)でも変わらなかった。

 彼には,あたしを女として愛する気は全くないらしい。だから,初夜にあたしを抱いたのも,彼にとってはただのデモンストレーション。儀式でしかなかったのだ。

 あたしはそんな男と,チャペルの祭壇の前で(いつわ)りの(ちか)いを立てさせられたのだった――。
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