幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~
ハネムーンにも行かず,あたしと正樹さんとの新婚生活が始まった。
救いだったのは,彼の実家での同居ではなく,実家近くの高層マンションでの夫婦二人きりの暮らしだったこと。それでも,あたしには気の休まるヒマがなかった。原因は彼のお義母さまだった。
「里桜さん,あなたは藤木家の嫁なんですから。自分の考えは捨てて,常に正樹を立てるようになさい。それが嫁の務めですよ」
義母はことあるごとに新居を訪ねてきては,あたしにそんなことを言っていく。典型的な「嫁いびり好きの姑」だった。
お義父さまにはご恩があるし,あたしのことを気にかけて下さるから,義父との関係はまずまず良好なのだけれど。
父の会社も買収されることなく,これまで通りに〈田澤フード〉として経営させてもらっているそうだし。
でも,義母と正樹さんはあたしの人格そのものが気に入らないらしい。というか,正樹さんはあたしに関心がないらしいし,何事も義母の言いなりだ。