幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~
あたしが「パートで働きたい」と言った時にもひと悶着あったけれど,彼はどうにか許してくれた。
見つけた仕事は,小さな印刷会社の事務の仕事。幸い商社勤めをしていたから,パソコン作業は得意だった。接客業や飲食店で働くよりはあたしに向いていたと思う。
ただ,あたしの趣味には,彼はうるさかった。
「下らない。――そんなど素人が書いたもの,誰が読むんだ?」
あたしは結婚前から,趣味でネットの投稿サイトに小説を書いてアップしていた。プロにならなくていいから,あたしの書いたものを読んでほしい。楽しんでもらいたい。ただそれだけだった。
「別に,趣味で書いてるだけだからいいんです。あなたには迷惑かけませんから」
あたしはとにかく,外の世界の人にあたしという一人の人間を認識してほしいだけ。これだけは取り上げられたくない。
外で働くこともまた,あたしがあたしでいたいという意思の表れだったのだ。