ドS執事の甘いおしおき。
でも我に返ると気づく。
これではない、と。
私は“あの”口づけがいいわけで嫌々決まりのようにするこれではなかった。
いや、あの口づけも“お仕置き”という名のもとで行われているのだから大差はないのだが、やはり違う。
私が一番ドキドキして、もっと触れたくて、もっと欲しいと思ったのは、不意にしてきたこの間の口づけ。
「ねえ、柊斗。お仕置きとか私の望みとかじゃなくて、ちゃんとした口づけがしたいのだけれど」
「は?」
柊斗は言葉を失っていた。
完全に執事でいることを忘れ、素が出かかっている。
「それなら慕っている御方としてください。私では力不足かと」
「違うの。柊斗がいいのよ」
自分でも何が言いたいのか、何を言っているのか全く分かっていなかった。
柊斗も心底呆れているだろう。
「つまりお嬢様は私に愛のあるキスをしろと言っておられるのですか?」
「そんなことは言ってないわ。ただこの間、お仕置きに関係ないあの口づけが忘れられないのよ」