無知な君は罠にかかったことを知らない

突然飛んできた厳しい声に、菜々はびくりと肩を震わせる。声のした方を見れば、ダルそうに椅子にもたれかかり、黒縁のメガネをかけたクール系男子がいた。その顔は恐ろしいほど整っている。

「す、すみません……。四ノ宮先輩……」

菜々はペコリと四ノ宮創馬（しのみやそうま）に頭を下げる。創馬は高校三年生で図書委員の委員長をしている。他の人への対応は優しいのに何故か菜々にだけ厳しいのだ。

「だから「申し訳ございません」だろ？お前最近委員会に遅れてくることが多いぞ。真面目にやる気があるのか？」

厳しい言葉が次々と突き刺さり、菜々は泣きそうになる。その時、他の先輩たちが「ちょっと！言い過ぎよ！」と止めてくれた。

「瀬野さん、真面目にしてくれてるじゃない。それに遅れるって言っても一分とかでしょ？もっと遅れてくる人だっているのにそんな言い方ないじゃない！」

「……時間の無駄だ。委員会を続けるぞ」

創馬はそう言い、勝手に委員会を進めていく。先輩に小声で菜々はお礼を言い、手元に置かれた紙を見た。