蒼き臨界のストルジア
一人頭を抱え苦悶する僕をしりめに彼女は、
僕から離れるとそのイルカを愛しげに撫で始めた。
イルカは突き出た高いおでこを、
少女の小さな手に気持ち良さそうにこすりつけ、
高い子供の歓声のような鳴き声で、
楽しげに「ピーピー」と鳴いていた。
別名、海のカナリアと呼ばれるだけあって、
その鳴き声はとても愛らしくかわいかった。
『喜んでる』
彼女はそんなイルカを見つめつぶやいた。
「イルカの言葉わかるの?」
『うん、わかる』
それに嫉妬したように傍らのもう一頭が、
首を突き出し「キーキー」と鳴いていた。
その餌付けされたような姿を見て
僕は彼女にたずねた。
「友達なの?」
『うん。 ピーピーとキーキー。 友達』
「かわいいね」
『かわいい?』
「愛らしいってこと」
その言葉に少女は不思議そうにこちらに振り向くと
、僕の真意を探るように僕の目をじっと見つめた。
『愛ってなに?』
・・・
僕はそうたずねる無垢な瞳に魅いられていた。
この少女は愛を知らないのだろうか?
その幼気な姿に胸が締め付けられ痛くなる。
「愛ってのは、好きって事だよ」
『好き?』
「好きってわかる?」
『うんわかる。
美味しいってことだよね。
私、イルカ好きだよ 』
・・・
それも愛の形か・・・
あまり深く考えるのはよそう。