蒼き臨界のストルジア
 
 
  都会では見えない輝く星空を。


  町の光は星々の輝きを打ち消す。


  田舎(いなか)に最初に来て気付いた事だ。


 その中でもこの浜辺は街灯(がいとう)の一つも無く、
 完全な闇が支配する聖域(せいいき)だった。


 そこから見上げる星々の輝きは、
 見た人にしかわからないだろう。


 (すべ)てが新次元の輝きで()ちていた。


 僕はその輝きにみいられ、
 その星空を何時間も見上げていた。


 優しく寄りそう親子星。


 決して届かないけど、
 (たし)かにそこにある温もり。


 現実の (きょう)(しゅう) は心に()み込み、
 ゆるやかに()まれて行く。


 寄せては返す波の音。



    命の鼓動(こどう)


   地球の鼓動(こどう)



 海は無償(むしょう)の愛に包まれている。


 その重みに深さに浸透(しんとう)してゆく。


 自分の体の形が無くなっていくような。
 世界の中に溶け込むような。


 揺りかごに揺られる様な
 優しい波しぶきに(いだ)かれ、
 いつの間にか僕は眠っていた。


 唐突(とうとつ)(あた)りが(さわ)がしくなる音で僕は目覚(めざ)めた。


 海辺で鳥達がギャーギャーと(さわ)いでいた。


  誰か来たのか?


 小山に(はさ)まれ雑木林(ぞうきばやし)を抜けないと来れない
 この場所を知る者は少ない。


 とは言え警戒心(けいかいしん)(まった)くなかった。


 都会に(くら)べ田舎の防犯意識は極端(きょくたん)に少ない。


 近所のほとんどの家がカギをかけてないし、
 だからこそ夜中でも、僕が家を抜け出して、
 この浜辺に来れるのだが。


 僕は(さわ)がしく鳥が(むら)がる浜辺に、
 近づいていった。


 街灯がないとはいえ、辺りは完全な闇ではなかった。


 満天の星々が柔らかく辺りを照らしてくれている。


 僕は足元から伝わる砂の感触(かんしょく)(たし)かめながら、
 その中を泳ぐように波打ち(ぎわ)まで歩いて行った。


 砂利(じゃり)感触(かんしょく)が砂漠のそれに変わるのを感じながら、
 僕はその場に到着(とうちゃく)した。


 鳥の(むら)がるその場所に。


 僕が近づく気配(けはい)察知(さっち)し、
 波打ち(ぎわ)で固また鳥達が一斉(いっせい)に飛び立った。


 白い影が一斉に夜空に飛び散るさまは幻想的で、
 まるで線香花火のように夜空に(はじ)け消えていった。

 そして鳥の山がいなくなったその場所には、
 何かの残骸(ざんがい)が転がっていた。


  怪獣(かいじゅう)!?


 一瞬そう思ったそれはもちろん怪獣などでは無く、
 見たことの無い生き物の(しかばね)だった。


 まるで、恐竜時代からタイムトラベルして来た(よう)な、
 爬虫類(はちゅうるい)的なフォルムをした何か。
 
 
 
< 2 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop