蒼き臨界のストルジア
 
僕が知らないだけで田舎(いなか)では、
ありふれた生き物なのかも知れないが、
無知な僕には十分刺激的(じゅうぶんしげきてき)な未知の生物だった。


サメでも()千切(ちぎ)りそうな大きな口に、
飛び(うお)の様な大きな羽をはやした
手足の無い爬虫類(はちゃうるい)のような異形(いけい)の何か。


深海魚の(よう)不気味(ぶきみ)さを(ただよ)わす、
魚類らしき何かだった。

死んでいるようだが、
それでもあまり近づきたく無い
不気味さがあった。


僕はそのとき目の(はし)にもう1つの影を(とら)えた。


少し離れた波打ち(ぎわ)で金属質の鉄塊(てっかい)が、
同じように打ち上げられていた。


その回りを寄せてはかえす海水が、
蛍光色(けいこうしょく)の青い光の波紋(はもん)を広げている。


その波紋の輝きが神秘的に、
その光景を(いろど)っていた。


僕はその光景に(さそ)われる(よう)に、
その打ち上げられた何かに近づいていった。


打ち上げられた鉄塊(てっかい)の回りを、
脈動(みゃくどう)する様にうねり(ただよ)(あお)き海水。


神秘(しんぴ)(いろど)られ、
半壊したように横たわる(はがね)残骸(ざんがい)


ポッドの(よう)な形の何かが波に洗われ、
廃棄(はいき)されたように寝そべっている。

カプセル型の乗り物らしき物には、
盾の様にも羽の様にも見える三本の足が
付いていた。


僕は中を確かめるため、
波の中に足を踏み入れる。


途端(とたん)脈動(みゃくどう)する(よう)に広がる青の燐光(りんこう)


その中で廃棄(はいき)された鉄塊(てっかい)が、
(ほの)かな輪郭(りんかく)を浮かび上がらせた。


流線型(りゅうせんけい)のフォルム。


卵型の胴体の半分はガラス()りになっている。


そのガラス()りのカプセルが半場開き、
その内部から(かす)かな光が漏れ出していた。


僕はまるで光に引き寄せられる虫の様に、
それに引き寄せられていった。


僕が近づくとその鉄皮(てっぴ)外郭(がいかく)で張り付いた、
トンボの様に目の飛び出した甲殻虫(こうかくちゅう)が、
まるでゴキブリの様に一斉(いっせい)に逃げ出した。


僕はその動きに(さそ)われるようにして、
ポッドの中を(のぞ)き込んだ。


内部は機器で(おお)われ、
そのコックピットらしき内部の座席で、
小柄(こがら)な少女が眠るようにうつ()せていた。


(きぬ)のような銀髪が濡れて(つや)めき、
青い燐光(りんこう)()らされ、
(なまめ)かしい光沢(こうたく)(はな)っている。
 
 
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