はつ恋。
「日奈子っ」

「わっ...」


有馬くんが私の背中に覆い被さるように抱き締める。


「あと1分でいい。日奈子とこうしていたい」

「うん...」


私は有馬くんの腕にそっと自分の手を乗せた。

夜になって気温が下がり、それに伴って冷えてしまった私の手に有馬くんの体温が染み渡っていく。

心までぽかぽかとしてきて、ずっとこの温度に暖められていたいなんて、思ってしまう。

なぜこんなに惹かれてしまうのか。

自分でも分からなくなるほど、

私は有馬くんを求めていて、

有馬くんもまた、私を求めている。

不思議な縁に引き寄せられ、

吸い込まれ、

私はしばらく動けなかった。

1分以上経ってから、有馬くんは私をそっと離した。

私は言われなくてもくるっと振り返ってその時を待った。

ゆっくりと、思い出をなぞるように唇が何度も降りては何度も離れ、それを繰り返した。

何かに染められ、

何かが埋められ、

私の心を覆っていた薄いベールが剥がれ、

燃えて無くなる。

有馬灯環という存在が、

あの日灯された炎に力を与え、

燃え盛っていく。

溶けていきそうなほどに

体が熱くなる。

その体をコントロールする術は何もなくて

ただ心に従い、

彼にされるがままに

私を預けていた。

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