はつ恋。
「ただいま~」


返事はない。

兄はどうやら帰ってきていないようだ。

ふーっと息を1つ吐いた後、洗面所に行った。

いつものように手と顔を洗い、ガラガラとうがいをして鏡を見た。

あっちゃんが言っていた首に残る痕。

あの日あっちゃんが見たものは消えていて新たにまた出来たものがある。

痛いのに、

嬉しい。

そこに触れれば、そんな矛盾した感情がよみがえる。

そんな感情を抱えてしまった私は、

もう以前のような顔つきではなくなっていた。

見たことがない表情をしている、見知らぬ少女の姿がそこにあった。


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