はつ恋。
「おはよ、日奈子」

「有馬くん、おはよ」

「湯井、ちょっと日奈子を借りていいか?」

「ええー。せっかく話してたのにぃ」

「すぐ戻る」


あっちゃんはしぶしぶ了承し、私は有馬くんの数歩後を着いて行った。

到着したのは、見覚えのある場所だった。


「えっと...そのぉ...」

「オレも入部する。バイトでなかなか来れないかもしれないけど、少しでも長く日奈子の側にいたいから」

「ありがと。なら、中に入部届あるから、それ書こ」

「了解」


部長である目黒先輩があっちゃんの入部の時に出しているのを見たから、ある場所は分かる。


「えっとね、確か...ここ。あった!」

「あったか。じゃ、さくっと書くわ」

「ほんと、ありがと。これであと1人入ってくれれば存続の危機、免れるんだけどね」


そう。

私達2年生と1年生の人数が5人になれば、来年の心配をする必要がなくなるんだ。

あと1人、誰か良い人いないかな。


「真谷に掛け合ってみる。サッカー部兼部オッケーらしいから」

「そっか。じゃあ、そうしてもらおうかな。ありがと、有馬くん」

「いいんだよ。オレが日奈子のためにやれることをやってるだけだから。こんなのカレシなんだから、当たり前だろ?」


そう言うと有馬くんは私の頬に手を伸ばした。

そして、挨拶と同じように軽くキスをした。

これで一体何度目だろう。

もう数えきれなくなってしまった。


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