はつ恋。
「朝からダメだよ」

「そうだな、ごめん」


有馬くんの手が離れていく。

私の心は恐怖に襲われ、手が出た。


「日奈子?」

「ごめん...。なんか、有馬くんが離れるとちょっと怖くて。1人に戻ったらどうしようとか考えたら、怖くなって、それで......」


私の恐怖を拭ってくれるのは、あの日からずっと有馬くんだけだ。

私は有馬くんに抱き締められるとほっとしてずっとそれを求めてしまう。


「大丈夫。オレがいる」

「うん...」


1度この暖かさを、優しさを知ってしまったらもう戻れない。

失うことが怖くなる。

そう、知った。


「日奈子の側にいるから、大丈夫。......大丈夫だ」

「うん...」

「でさ、オレ考えたんだけど...」


私を抱き締め、頭を優しく撫でてくれながら有馬くんは呟いた。


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