はつ恋。
「そんなこと言う人には夕飯あげないよ~」


カレーの仕込みを終えた知里さんがこちらにやって来る。


「朝日はひなちゃんに幸せになってもらいたくないの?」

「そんなわけないだろ。心から幸せになってもらいたいって思ってる。だから...」

「だったら、今ひなちゃんにかける言葉違うんじゃないの?」


知里さんの視線とお兄ちゃんの視線がぶつかる。

知里さんのこんな表情、初めて見た。


「ひなちゃんがこんなに熱くなること今まであった?」

「それは...」

「ないよ。初めてこんなにも誰かを想ったの。ワタシはその気持ち、大事にしてほしいと思う。

上手くいこうがいくまいが、こんなに真剣で真っ赤に燃えてるんだから、信じてあげなよ。

それとも、可愛い可愛い実の妹の言うことも気持ちも信じられないっていうの?」


知里さんの言葉に圧倒された。

お兄ちゃんはもちろん、私も有馬くんも打ちのめされた。

さすが知里さん。

芯がしっかり通ってて

それでいて強い。

そんな知里さんにお兄ちゃんはきっと...

頭が上がらない。


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