はつ恋。
あの夜。

灯環は私に言ったんだ。

灯環が私にキスをしたのは、

自分を記憶してもらうためだった、って。

あの時灯環は離婚寸前の両親のケンカに巻き込まれて精神状態がぼろぼろで、本当は死ぬつもりだったらしい。

でも、そこに私が現れて

自分が助けてあげれば

この子に自分のことを覚えててもらえれば

それが自分の生きる意味になるかもしれない。

この子の生きる意味になりたい。

そう思ってあんなことをしたんだって。

私も灯環も

あの日

あの時

あの場所で

出会えていなかったとしたら、

今こうして笑っていなかった。

この出逢いに感謝して

私は生きる意味を

このカメラに収め続けていきたいと思う。

隣で私に向かって微笑んでくれる

最愛の人と共に。


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