はつ恋。
「日奈子っ!あんた、襲われたの?だってカレシいるとか、聞いてないし。誰に?もしかして目黒先輩とか?」

「襲われたって、熊じゃないんだし、人に対してそんな言い方失礼だよ。それに目黒先輩には何もされてないよ」

「なら誰?誰に何されたの?それとも、あたしより先にカレシゲットしてやることやっちゃったとか?」

「へ?」


突然日本語が不馴れになった。

最近は大分流暢になってきたと思ってたんだけど、まだ練習が足りないらしい。

もうちょっと人と話さないと。


「ま、いい。とりあえず、日奈子が無事なら、うん...まぁ、いい。

でも、この連休中にはちゃんと話聞かせてもらうから。

ってか、その相手の男連れてきて!あたしに許可なく日奈子に手ぇ出した不純な男なんてみじん切りにしてやる!

いや、そんなんじゃ、収まらん!みじん切りにしたあとミキサーにかけてグツグツ煮込んで地獄見せてやる!覚悟してろ!」

「ふふっ。あっちゃん面白い...」

「笑ってないで!命に関わる大事なことなの!超絶デリケートな問題なんだよ!それを笑うって、も~日奈子、可愛いっ!」


あっちゃんの言ってることはよく分からないけれど、私を大事にしてくれてるのはすごく良く分かる。

ここ最近になって急に願い事が叶っちゃったから、あんまり自覚してなかったけど、私、ちゃんと友達になれたんだ。

私を大事に想ってくれる友達に出逢えたんだ。

良かった...。

本当に良かった...。


「あっちゃん、ありがとう」

「もぉ、意味分かんな~い!でも、嬉しい~!」


狭いトイレに2人きりで抱擁しているという異様な光景の終焉を迎えたのは、それから2、3分後の出来事だった。


「こらっ!敦子っ!ちゃんと働きぃっ!」


ガラス窓からうっすらと鬼の形相が見えたため、あっちゃんは青ざめ、私を離してトイレから出たのだった。

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