はつ恋。
「日奈子」

「何でしょう?」

「すっごく良く撮れてる。これと......あと、これ。オレのお気に入り。構図もアングルも完璧だ」

「詳しいんだね、有馬くん...」


誉められて頬が熱くなってる。


「まあな。カメラちょっと興味あって」

「そうなんだ。でも、あんまり長時間見ないで。もう耐えられない...」

「はいはい。じゃあ、こんなもんで。古いやつも見せてくれよな。去年の夏休み開けからずっと撮ってるんだから」

「な、なんでそれを...」


有馬くんはふっと笑った。


「撮られてるの知ってたから。オレ、ガチ寝してるの、ほんの数分なんだよ。その後はずっとうとうとしてて。うっすらと視界の奥に見えてたんだよ、日奈子が」

「そうだったんだ...」


それに気付かず半年も撮っていたなんて...。

自分の鈍感さに呆れて言葉が出ない。

でも......


「どうして?どうして私に言ってくれなかったの?気づいてたなら、言ってくれれば...」

「言ったら来なくなるだろ?オレは日奈子に撮ってもらいたかったし、日奈子と数分でも同じ時間を共有したかったんだよ」


なら、それを伝えてくれれば良かったのに。

そしたら、もっと長く...

長く一緒にいられたのに。

去年のクリスマスも、

お正月も、

一緒にお出かけ出来たかもしれないのに。


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