翠玉の監察医 日出づる国
「ミゲウさんの死は事故ではないと思っているのですか?」

蘭の問いに男性はコクリと頷く。桜木刑事が「でも、現場を見る限りあれは階段から落ちてしまった事故だ」と言うと、「絶対違う!!」と男性は大声で言った。

「ミゲウもみんなも、仕事に殺された!工場が必要なのは、安いお金でも何十時間も働いてくれる人!でも、そんなの私たち生活できない!でも、文句言うとみんな死んでる!」

男性はそう言い、両手で顔を覆う。その背中を蘭は優しく撫でた。その顔は変わらず切なげだ。しかし、その目が一瞬閉められた事務所のドアに向けられる。

蘭の警戒したような目を見て、圭介の心にも緊張が走った。



「神楽さんがポルトガル語を話せるなんて知りませんでした」

世界法医学研究所に戻り、蘭が碧子たちに報告をしていると圭介がポツリと言う。するとゼルダが「蘭はアメリカにいたから英語もペラペラよね〜」と言い、蘭をニコニコしながら見つめた。
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