翠玉の監察医 日出づる国

「よかったら、一緒にご飯食べに行きませんか？せっかくですし……」

男性から食事に誘われたことは初めてで、蘭はエメラルドのブローチに触れる。星夜から食事に誘われたことなどあったか記憶を辿っても、そんな記憶は見つからなかった。

「私……」

蘭が口を開こうとすると、「あの！」と声をかけられる。蘭と圭介が振り向くと、日本人ではなく外国人の女性が緊張したような顔で立っていた。緑の派手なワンピースを着た四十代ほどの女性だ。

「失礼ですが、どちら様でしょうか？」

蘭が訊ねると、「リヴィア・オリベイラです。ミゲウ・オリベイラの母です」と女性は俯きがちに答える。その名前に圭介の目が見開かれた。

「警察の人に、ここにお願いすれば解剖してもらえると聞きました。息子がどうして死んだのか、知りたいです！」

リヴィアはそう言い、涙を拭う。圭介が「あれは事故なんじゃ……」と言おうとするのを蘭は遮り、「わかりました。ミゲウさんの解剖をさせてください」と答える。