翠玉の監察医 日出づる国
「本当ですか!?」

リヴィアは喜び、蘭を抱き締める。蘭は抱き締められた温もりに少し驚いた顔を見せた。

「神楽さん、解剖をするんですか?」

圭介に訊ねられ、蘭は「はい。ご依頼があれば、私たちは誰のご遺体でも解剖いたします」と答える。日本人でも、ブラジル人でも、大切な人の死の真実を知りたいと思う人はいる。その人たちの声に蘭は耳を傾けていきたいのだ。

「お礼にうちに来てください!夕食をご馳走します!」

リヴィアにそう言われ、蘭と圭介はリヴィアがもう一人の息子であるベルナルドと暮らしているアパートへお邪魔することになった。



リヴィアが住んでいるアパートは、法医学研究所から歩いて二十分ほどのところにあった。多くの外国人労働者が住んでいるようで、アパートの前では東南アジアの人たちやブラジル人たちが話している。

「こんにちは」

蘭は目が合った人たちに挨拶をし、圭介はペコリと会釈をしながら歩く。アパートの一番端の部屋がリヴィアの住んでいる部屋だ。
< 16 / 30 >

この作品をシェア

pagetop