翠玉の監察医 日出づる国
「法医学の、希望に」

蘭は呟き、事故現場へと向かった。



小向工場に着くとすでに現場には多くの警察がいて、黄色のテープも張られていた。

「すみません、法医学研究所の者です。桜木刑事に呼ばれて来ました」

蘭はテープの前に立っている警察官に身分証を見せ、無表情のまま話す。しかし、「えっ?あなたが?」と警察官は警戒したような目を向けた。当然だ、蘭は十八歳なのだから。

「神楽さんは本物の監察医ですよ!」

圭介がそう言うものの、警察官は通してくれる気配を見せない。その時、「ああ。今日は君が来たのか」と黒いスーツを着てクシャッとした髪をした男性が姿を見せる。蘭を呼んだ桜木刑事だ。

「お久しぶりです、桜木刑事」

蘭はペコリと頭を下げる。桜木刑事は世界法医学研究所によく解剖を依頼してくれるのだ。

「蘭ちゃんは本物の監察医だ。通してやれ。ところで君は?」

蘭の隣に立つ圭介を桜木刑事はジッと見つめる。圭介は緊張しながら「探偵の深森圭介です。世界法医学研究所で研修をさせてもらっています」と言った。
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