悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2
「……これは、父上の希望でもあるからな」
「本当、お前はうまくやったもんだ。父上が皇子に望んだものはすべて手に入れた――違うか?」
「何のことだ」
「家臣の信頼、民の信頼、そしてバルダート家の信頼だ」

 バルダート家も家臣の一部であるには変わりがないのに、アンドレアスはあえてバルダート家は別に上げた。

「……それは、ヴィルヘルム様が行動した結果、得られたものでしょう。そして、ケルスティン様が、懸命に振る舞われた結果ではないかと」

 次世代の皇帝候補者を排除するために、アンドレアスの母は手を汚した。ヴィルヘルムの母はそれをしなかった。
 彼女には、何がなんでもヴィルヘルムを皇帝にしようという野望なんてなかった。それは、ヴィルヘルムも同じ。
 皇帝が、アンドレアスを後継者に指名したならば、素直に彼に忠誠を誓っただろう。
 ヴィルヘルムが家臣の信頼を勝ち取ったのは、うかつな行動をとらなかったからだ。
 思い切ったことを言ったために、アンドレアスの怒りを買うかもしれない。ぐっと息をつめて、彼の反論を待った。

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