悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~ 2
 贅沢に暮らしてきた人だから、不平や不満を漏らすものと思っていたけれど、ハルディール夫人は文句を口にすることはなかった。
 着替えや食事のタイミングでレオンティーナの手を借りることはあっても、必要以上にこき使ったりもしない。前世での彼女を知っているレオンティーナからすれば、その沈黙が逆に不気味に感じられるほどだ。

(……牢に入ったことで、何か変わったのかしら。この方も)

 そして、ターナジアに到着したのは、皇都ロアを出発して、二週間が過ぎたあとのことだった。
 贅を尽くした馬車とはいえ、座りっぱなしは身体がこわばる。

(アンドレアス殿下のお屋敷は、今は主(あるじ)がいないのよね……)

 アンドレアスの屋敷は、この周囲で一番の建物だ。ハルディール夫人という立場の女性を宿泊させるには、一番適しているのがそこだった。
 アンドレアスが行方不明となっている間も、屋敷は使用人達の手によってきちんと手入れされていた。窓はピカピカに磨かれているし、床には埃ひとつ落ちていない。
 この屋敷に仕える使用人が一行を出迎え、中へと案内してくれる。
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