悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く～破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます～ ２

玄関ホールは、レオンティーナが以前訪れた時と変わっていないように見えた。皇都と同じような家具を備えた、贅沢な設えである。

「明日、ザリロッド王国の使者がこちらに来るのね」
「さようでございます、奥様」

　かつては皇妃と呼ばれた女性であるけれど、今は一夫人にしか過ぎない。
奥様という呼称に、ハルディール夫人はわずかに顔をしかめた。だが、使用人にこれ以上文句を言ってもしかたがないということもまたわかっているのだろう。すぐにレオンティーナの方を振り返った。

「……休みます。レオンティーナ、支度を」
「か、かしこまりました！」

　ハルディール夫人が、この屋敷を訪れたのは初めてのはずだ。だが、彼女は何度もこの屋敷を訪れているかのように、迷いなく階段を上がっていった。

「二階の右端のお部屋でございます」
「……そう」

　ハルディール夫人がこの屋敷に宿泊するのは、今晩だけだ。明日には、ザリロッド王国の使者がこの屋敷に到着する。

「――アンドレアスは、どこに行ってしまったのかしら。今夜は、こちらに戻ってくるの？　私がここに来たと聞いたら、戻ってきてくれないかしら」