可愛くないから、キミがいい【完】
*
「俺、広野のことがずっと好きでした」
「えっ、本当? 嬉しいなあ」
「最近、彼氏と別れたって聞いたから。もしよかったら、俺と付き合ってくれない?」
人気のない放課後の中庭。
目の前で、顔を赤く染めて告白の言葉を紡ぐ男の子に、思わず舌打ちをしそうになりながらも、ぐっとこらえる。
申し訳なさそうな顔をつくって、頭を下げた。
「ごめんなさい。今、恋愛はする気になれなくて。でも、気持ちはとっても嬉しかったです。友達でもいい?」
斜め三十度がいちばん可愛く見える上目遣い。
あざとくみえない程度に首を傾げて、もう1度、ごめんね、と言えば男の子の頬は赤く染まる。
「そうだよな。やっぱり別れてすぐだしな」
「うん、ごめんね」
「いや、俺の方こそごめん。ちゃんと答えてくれてありがとね」
「ううん、こちらこそ、ありがとう」
「じゃあ、俺、行くわ。ばいばい」
肩をさげて、去っていく男の子の姿が見えなくなるまで手を振って、視界から消えた瞬間、即座に手を下ろした。
よし、今日の面倒ごとも無事完了だ。
一生懸命思いを伝えるのって勇気がいることだもんね。気持ちには答えられないけれど、すごく嬉しかった。
私のことを好きになってくれて、ありがとう。
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