可愛くないから、キミがいい【完】









「俺、広野のことがずっと好きでした」

「えっ、本当? 嬉しいなあ」

「最近、彼氏と別れたって聞いたから。もしよかったら、俺と付き合ってくれない?」





人気のない放課後の中庭。

目の前で、顔を赤く染めて告白の言葉を紡ぐ男の子に、思わず舌打ちをしそうになりながらも、ぐっとこらえる。


申し訳なさそうな顔をつくって、頭を下げた。




「ごめんなさい。今、恋愛はする気になれなくて。でも、気持ちはとっても嬉しかったです。友達でもいい?」




斜め三十度がいちばん可愛く見える上目遣い。

あざとくみえない程度に首を傾げて、もう1度、ごめんね、と言えば男の子の頬は赤く染まる。




「そうだよな。やっぱり別れてすぐだしな」

「うん、ごめんね」

「いや、俺の方こそごめん。ちゃんと答えてくれてありがとね」

「ううん、こちらこそ、ありがとう」

「じゃあ、俺、行くわ。ばいばい」





肩をさげて、去っていく男の子の姿が見えなくなるまで手を振って、視界から消えた瞬間、即座に手を下ろした。



よし、今日の面倒ごとも無事完了だ。


一生懸命思いを伝えるのって勇気がいることだもんね。気持ちには答えられないけれど、すごく嬉しかった。


私のことを好きになってくれて、ありがとう。






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