可愛くないから、キミがいい【完】
和泉しゅうの洋服の袖をぎゅっと掴む。
「広野?」
「……やりたいこと、できた」
「は?」
和泉しゅうを利用させてもらう。
だって、やっぱり、未だに納得できないのだ。
だんだんと近づいてくる、ふたり。
―――一度は付き合うことになったのに私のことを振った男の子、旭 千草と、その全ての原因となった彼の幼なじみ。
私の方が可愛い。私の方が彼女にするなら絶対にいい。私の方がお似合いだった。それなのに。
自分より可愛くない女の子が、自分より何倍も幸せそうにしているなんてやっぱりこの目で見てしまうと、許せそうにない。
「和泉君、キスしたい。今、ここで」
「は?」
廊下の、端で立ち止まる。
二人との距離がだんだんと近づいてくる。そこで、ようやく二人から視線を逸らして、和泉しゅうに顔を向けた。
和泉しゅうは、戸惑ったような表情を浮かべていた。
眉をよせて怪訝な顔をしている、と言った方が正しいだろうか。