可愛くないから、キミがいい【完】
「和泉君、今、ここで、みゆにキスしてよ」
「は?……何言ってんの?」
私の方があなたたちよりも幸せなのだ。嘘でもなんでも、それを二人に見せつけてやりたかった。
顔だけは、ちぃ君よりもタイプな和泉しゅうだ。和泉しゅうの方が世間一般的にもルックスは勝るかもしれない。ちぃ君の幼なじみの女よりは、圧倒的に私の方が可愛い。
美男美女が、公然の場でキスをするのだ。
絵になるでしょう?幸せそうでしょう?
振られたことなんて、もうちっとも気にしてないのだと示したい。私は惨めじゃないのだということも示したい。
視界に入ったその姿に、そう強く思った。
「和泉君、」
「お前、飴なめたら、頭おかしくなった?」
「なってないよ」
「は?」
「はやく、してよ」
「は?やだよ、アホか」
「……じゃあ、和泉君がしてくれないなら、みゆがするからいいよ」