可愛くないから、キミがいい【完】
「俺がそれするなら、舌くらいいれるけどな」
「………は、」
「何が言いたいかわかんねーの?」
「なに、」
「お前、あんまり、ふざけたことしてんじゃねーぞ」
そのまま、強い力で手を引かれて、見えないスポットライトの外側へいく。
和泉しゅうは、私のほうを一切見ずに、私の手首を掴んだまま早足で歩き出した。足の長さが全然違うから、私は小走りになってしまう。
手首は痛いし、和泉しゅうは完全に怒っているしで、今の今までちぃ君たちのことで頭がいっぱいだったのに、次第に脳内は和泉しゅうの占める割合が大きくなっていく。
そして、たどり着いたのは、人のいない屋上の前の階段だった。
そこまできて、ようやく手首が解放される。
熱のこもったその箇所に、あたった風がとても冷たかった。
切れてしまった息を整えて、和泉しゅうに向き直る。
巻き込んでしまったからやっぱり謝ろうと思って、口を開いたとき、それよりも先に和泉しゅうが言葉を発した。