可愛くないから、キミがいい【完】
「俺らのすぐそばに、ミスターコンのやつが女といた」
「……は、」
「お前が付き合ってたっていうやつと顔そっくりなやつ。てことは、そいつだろ」
「………」
「さっきの、そういうことだろ?違う?」
「………何が」
ぐっと詰め寄られて、三つ編みを引っ張られる。
そのまま、上を向かされた。
さっき触れていたときとは違うかなり強引な触れ方だった。
「なんで俺にキスなんかしてんだよ」
怒っている。
とても怒っているのが、ぜんぶ伝わってくる。
ただでさえ目つきの悪い男の子だ。
怖くなったけれど、精一杯見上げて、全然平気だという顔をつくる。
「……見せつけたかっただけだよ、みゆが振った相手だけど、みゆより幸せそうにしててほしくないもん。和泉君のスタンプラリーに付き合ったじゃん。それくらいいいでしょ?みゆは、みゆが一番幸せじゃないと嫌なんだもん」
本音にプライドのための嘘が混じったものを、平気で打ち明けた。
こんなことができてしまうのは、世界で一人、私の可愛くないところを知っている和泉しゅうにだけなのだと思う。