可愛くないから、キミがいい【完】
「あいつら、お前に気づいてすらいなかったぞ」
「………は、」
「たぶん、あの男は、お前のことなんて、もうどーだっていいんだろうな」
そのまま、少しだけ顔の距離が離れて、綺麗な形をした両の目にしっかりと捕まってしまう。
怒っているのか、あざ笑っているのか、或いはそのどちらもなのか。
分からないけれど、和泉しゅうの言葉で、心臓に何かが刺さって、そこから、じわりと熱くて痛いものが流れていく心地に襲われている。
痛くて、苦しいのに、さっき私が触れた唇が、また新たに音をつむぐ。
「お前は、どうせ本気で人のこと好きになったことなんかねーんだろ。見た目ばっか。どう見えるかばっか。そんなんだから、空っぽに見えるんだよ」
「……なに、」
「お前みたいなやつのこと、なんて言うか知ってる?」
言わないで、ほしかった。
だけど、言ってしまうんだって分かってた。
飴は、もうすでに口の中にはない。
甘ったるさの欠片も、ない。
そのまま、しっかりと目を合わせたまま、和泉しゅうは、吐き出すように私に言葉を投げつけた。