可愛くないから、キミがいい【完】






「あいつら、お前に気づいてすらいなかったぞ」

「………は、」

「たぶん、あの男は、お前のことなんて、もうどーだっていいんだろうな」




そのまま、少しだけ顔の距離が離れて、綺麗な形をした両の目にしっかりと捕まってしまう。


怒っているのか、あざ笑っているのか、或いはそのどちらもなのか。


分からないけれど、和泉しゅうの言葉で、心臓に何かが刺さって、そこから、じわりと熱くて痛いものが流れていく心地に襲われている。

痛くて、苦しいのに、さっき私が触れた唇が、また新たに音をつむぐ。




「お前は、どうせ本気で人のこと好きになったことなんかねーんだろ。見た目ばっか。どう見えるかばっか。そんなんだから、空っぽに見えるんだよ」

「……なに、」

「お前みたいなやつのこと、なんて言うか知ってる?」




言わないで、ほしかった。

だけど、言ってしまうんだって分かってた。



飴は、もうすでに口の中にはない。

甘ったるさの欠片も、ない。


そのまま、しっかりと目を合わせたまま、和泉しゅうは、吐き出すように私に言葉を投げつけた。





< 110 / 368 >

この作品をシェア

pagetop