可愛くないから、キミがいい【完】
「西高の男の子だよ?誘われたから、一緒に学祭回ってたの」
「それで、キスなんてしちゃう?」
「へへ、しちゃった」
少し恥じらいながら完璧な照れ笑いを浮かべておく。唇をとがらせたなほちんに軽く小突かれた。
その日、他の人たちにも何度か同じようなことを聞かれたけれど、全部同じ答えを返しておいた。
山路君にだけは、「和泉と何かあった?」と心配そうな顔をされたので、「和泉って誰だっけ?」と可愛いきょとん顔を作ってあげた。
噂のいのちはもって三日だ。
次第にほとぼりも冷めていく。
それだけど、マユとミーナとお喋りしても、仲良しの男の子たちにちやほやされても心は一向に晴れないままだった。
自分の部屋のドレッサーの鏡で、可愛い顔をつくってみても、“可哀想”なんて最低な言葉がどうしてもちらついて、どうしようもないのだ。
このままじゃ、だめ。
天使で、いられなくなってしまう。
そう思って、ある決心をしたのは和泉しゅうとの間で最悪なことが起きてから五日後のことだった。