可愛くないから、キミがいい【完】
「……この人が可哀想じゃないってことは、みゆも可哀想じゃないし」
一度は気が動転して和泉しゅうの前で認めてしまったことを、一人きりの部屋で、エンドロールを眺めながら訂正する。
可愛い。可愛いのだ。私は、可愛い。
魔法の言葉を口の中で転がすように唱えてみるけれど、いつもと同じ気持ちになれなくて焦ってしまう。
どうしてなのだろう。
ナンバーワンの映画だ。私の教科書かつ、バイブルでもある。いつものように感動もしたし、気持ちを立て直す気にもなった。
それなのに、映画が終わってもなお、心の一番奥の大切にしているところに、すとん、と落ちてこないのだ。
「…………、」
もう一度見るべきなのかも。
そう思って、毛布から抜け出そうとしたとき、ベッドの脇に置いておいた携帯が音を立てた。
電話の着信音。
基本的に、友達とはメッセージアプリを使っているし、男の子とも初めは電話番号を交換するけれど、そのあとすぐにアプリに切り替える。
だから、パパかママのどちらかだと思った。
しばらく鳴りやまないその音に、小さくため息だけこぼして、携帯を手に取る。