可愛くないから、キミがいい【完】





「もしもし、みゆです」



画面をよく確かめもせずに出てしまう。

こんな時間に両親が私に電話をかけてくるなんて珍しい。



「もしもし?」



なかなか声が聞こえなくて、もう一度、電話の決まり文句を口にすれば、電話口から息を吐きだすような音が聞こえて。


ーーー『広野?』


ノイズの混じった低音が耳を掠める。

体がその途端、硬直する。

顔から血の気が引いたのが自分でもわかった。



ストーカーとかそういう類の恐怖では一切ない。

心の準備をしていなかったことと、ありえない状況による恐怖心だ。




「……だれですか」



95パーセントくらい、確信して聞いた。

5パーセントで敗北することは、なんとなく分かっていた。



『だれって、俺』

「………」

『和泉』



―――やっぱり、和泉しゅう、だった。




私は、完全に油断して電話にでてしまったわけだ。

さっき映画で少しだけ天使の力を取り戻したのに、すぐに挫かれたような気分になる。

というか、そもそもどうして私の連絡先をこの人が知っているのだろう。




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