可愛くないから、キミがいい【完】
「……みゆのストーカーなわけ?」
『なわけねーだろ。初めて会った時にしつこく連絡先交換ねだってきたのはどこのどいつだよ』
蘇る記憶に、盛大なため息がでる。
わざと、和泉しゅうに聞かせてやった。
ちくちくする。心臓が、嫌な感じ。
「もう、みゆの連絡先は消してくれればいいよ。……切っていい?」
ぎゅっと唇をかんで、通話終了ボタンに親指が触れかけたとき、『だめ』と、拒否の言葉が返ってくる。
そんなものは無視してボタンを押せばよかったのに、どうしてか指は画面に触れてくれなかった。
「なに、まだみゆに文句言いたいわけ?」
『違う。謝ろうと思って』
「はあ?」
今更何なんだ。そんなこと、私は、一つも欲してない。相手には何も見えていないのに、思わず眉をしかめる。
だけど、その瞬間、
鼓膜に不透明なバリトンが触れた。