可愛くないから、キミがいい【完】




『別に、来週じゃなくてもいいけど。暇な土日くらいあるだろ』

「……何なわけ、」



辛うじて打った相槌は、どうしてか頼りなくて、いじけてるみたいな声になってしまう。


『だから、来週の土曜日、一日空いてるかって聞いてんの』

「……なんで、そんなこと聞いてくるの」

『分かんねーの?』

「……分からないし」

『ほんとに?』

「……分からないもん」



分かるようで分からない、境界線のすれすれのこと。相手が和泉しゅうだから、分かりたくなんてないのだ。


膝のうえに顎を置いて、ぎゅう、と唇を結ぶ。

電話の向こうで和泉しゅうは、今、どんな顔をしているんだろう。どうせ、ムカつく顔をしているにきまっている。


そんなことを思いながら、不貞腐れたような心地を抱えていたら、全然透き通ってはいない声が不意に落とされた。



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